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【売却基礎知識】不動産売却に係る諸費用
更新日:4月23日
不動産の売却を検討する時に必ず気を付けておきたい点として、「不動産の売却代金がそのまま売主のものになるわけではない」という点です。
不動産の売却には、手数料や税金などもろもろの費用が発生します。それらを差し引きして残ったお金が、売主の手元に残るわけです。
せっかく大切な不動産を売るのであれば、誰しもできる限り多くのお金を手元に残しておきたいですよね。
必ずかかる費用としては、仲介手数料、印紙税、登記費用があります。
また、場合によっては、住宅ローンの繰り上げ返済手数料や譲渡所得税、ハウスクリーニング費などがかかってきます。
一般的に不動産売却でかかる費用は売却価格の4~6%程度と言われています。
例えば、2800万で自宅を売却した場合だと約105万ほどかかります。
これらの事前の費用の把握ができておらず、直前になって資金準備に慌てたり、本来なら払う必要のないお金まで払ったりして、損してしまうケースが後を絶ちません。
あなたが所有している不動産を売却するためには、どんな費用が必要なのか把握しておくことは極めて重要です。
そこで本記事では、不動産売却を考え始めたら真っ先に知るべき情報ともいえる「不動産売却の費用」について、詳しく解説します。
どんな費用がかかるのか事前に把握し、損のない形で大事な不動産を売却できるようにしましょう。
目次

売却費用① 仲介手数料
仲介手数料とは、不動産会社に物件の販売活動を行ってもらい、成約した場合に仲介業務の報酬として支払われるものです。
仲介手数料の上限金額は、宅地建物取引業法で、以下のように定められています。
売却価格 | 仲介手数料 |
200万円以下 | 売却価格の5%+消費税 |
200万円超400万円以下 | 売却価格の4%+2万円+消費税 |
400万円超 | 売却価格の3%+6万円+消費税 |
この上限額を超えない範囲内で不動産会社が自由に決められることになっています。
例えば、売却代金が3000万円だった場合は105万6000円ということになります。
仲介手数料は一般的に売買契約の際に半額を支払い、物件の売却が完了した際に残りの半額を支払います。
万が一、売れずに売却を辞めた場合は仲介手数料は発生しません。
しかし、手付解除 や 違約解除 の場合は売買が成立しなくても仲介手数料が発生します。
手付解除 … 売買契約後に売り主又は買い主の事情で契約を解除する
売買契約の後、手付解除期日(通常30日間)までは、原則理由を問わず、買い主は手付金を放棄することで、売り主は手付金を返還し、さらに手付金と同額を買い主に支払うことで、契約を解除できます。
手付解除の場合は、売買は成立していませんが、仲介手数料を支払わなくてはいけません。
違約解除… 売買契約に対してどちらかが守らず契約を解除する
売買代金を未払いなど契約違反(債務不履行)の場合は、相手方が損害賠償の請求を行い、催告しても履行されないと契約を解除できます。
この場合も不動産会社に仲介手数料を支払う必要があります。
売却費用② 印紙税
印紙税とは、経済的取引などに関連して作成される文書に課税される税金のことです。
不動産の売買契約書は印紙税の課税文書なので、定められた金額の収入印紙を貼り付し、消印することによる納税が必要です。
印紙税の税額は契約書に記載されている取引額によって定められています。
契約金額(取引額) | 本則税率 | 軽減税率 |
---|---|---|
100万超~500万以下 | 1000円 | 500円 |
500万超~1000万以下 | 5000円 | 1000円 |
1000万超~5000万以下 | 1万円 | 5000円 |
5000万超~1億以下 | 6万円 | 3万円 |
1億超~5億以下 | 10万円 | 6万円 |
令和6年3月31日までは軽減税率が適用され、本則税率よりも減額されています。
印紙税は売主と買主、それぞれの契約書に印紙税額分の収入印紙の貼り付けが必要です。
ただし、売主分の売買契約書の原本が必要なければ収入印紙を貼り付した買主の契約書のコピーで代用できるので印紙税がかかりません。
原本とコピーの内容に相違がなければ契約の効力は同じなのでコピーをもらい、印紙税を節税することが可能です。
ただし、コピーにすることで買主と変にもめる可能性がある場合は原本を保存することがおすすめです。
売却費用③ 登記費用
登記とは、その不動産の現在の状況や権利関係を登記簿に記載することです。
売買や相続、贈与、建物を新築した時など不動産の登記に変更があった場合は、登記手続きをしなければなりません。
この登記手続きは、登録免許税という税金がかかります。土地または建物1件につき1,000円となります。
例えば、購入時に住宅ローンを組んでいる場合、購入した不動産を借入額の担保にするために抵当権の設定登記がされています。
そして、購入時の住宅ローンが残っている家の場合は、ローンを完済して抵当権を抹消する登記が必要です。
抵当権を抹消しておかなければローンが完済していたとしても、登記簿上では抵当権が設定されたままになるので注意が必要です。
不動産を売って得た売却代金で住宅ローンの完済をする場合には、買主から売主へ売買代金が支払われた後での抵当権抹消になるため、取引の信頼性という観点から司法書士に手続きを依頼する必要があります。
その他にも登記簿上の住所や苗字に変更がある場合は登記変更手続きが必要ですが、司法書士に依頼して行うことが一般的です。
司法書士に依頼した場合、登記内容や登記する不動産の価額にもよりますが、1万円~5万円程度が報酬の相場となっています。
売却費用④ 住宅ローンの繰上げ返済手数料
住宅ローンの繰り上げ返済手数料とは、ローン残高の一部または全部を繰り上げて返済した時に発生する金融機関所定の手数料のことです。
売却する不動産にローンが残っている場合、一括返済のために金融機関の事務手数料が必要です。金額は、金融機関によって異なり、窓口・電話・ネットなど手続き方法によっても異なります。
大手銀行の場合、窓口・電話・ネットなど手続き方法によって5千円~3万円ほどかかります。
住宅ローンが残っている家を売却した場合、売買代金でローンを返済してしまうことが多いので繰り上げ返済手数料が必用になります。
売却費用⑤ 譲渡所得税
譲渡所得税は、所得税と住民税からなります。
家を購入した時の金額よりも高く売却して利益が出た場合は、譲渡所得税の納税が必要です。逆に売却して利益が出なかった場合は、譲渡所得税を支払う必要はありません。
課税の対象となる譲渡所得は、「不動産の売却価格」から「不動産の購入にかかった費用(取得費)」と「売却にかかった費用(譲渡費用)」を差し引けば求められます。
譲渡所得税の税率は所有期間によって異なり、所有期間が5年を超えているか否かで決まります。
所有期間 | 譲渡所得税 | 住民税 | 合計 |
---|---|---|---|
5年以下 | 30.63% | 9% | 39.63% |
5年超え | 15.315% | 5% | 20.315% |
譲渡所得が出ても3千万までは非課税になる特例もあるので利用した場合は課税されません。(3000万円特別控除)
ただし、住み替えの場合はこの特例と住宅ローン控除の併用ができないので注意が必要です。
売却費用⑥ 土地測量費
土地や一戸建てを売却する際に、土地の面積や境界が曖昧な場合は測量や境界確定が必要になります。
土地を売却する際、買主から土地家屋調査士が作成した「確定測量図」と隣地の所有者が境界に合意したことを示す「境界確認書」を求められる場合があるので、境界が定まっていない場合は、確定測量を行い、作成が必要です。
特に古い土地の場合には、測量図があっても正確性に欠けていたり土地の境界を示す境界標が破損あるいは撤去されていたりといったことがありますので注意が必要です。
測量費用は売主負担になります。
30~40坪程度の一般的な住宅地では30~45万円程度が相場と言われています。
売却費用⑦ 建物解体費
築年数が古い家の場合は建物に価値がなく、更地にすることを条件に売却することが多く、解体費用が掛かる場合があります。
解体費用は売主が負担しなければ、買い手がつきにくいこともあります。
解体費用は木造で1坪当たり4~5万円、軽量鉄骨造で1坪当たり6~7万円程度が相場です。
売却方法の1つとして、建物を解体せずに「古家付き土地」として売却するという選択肢もあります。その場合には、解体費用と同程度の金額を、売買代金から割り引くのが一般的です。
売却費用⑧ ハウスクリーニング費用
「ハウスクリーニングをしなければならない」という決まりはありませんが、売却前にハウスクリーニングをして、住宅を購入して次に住む方が気持ちよく入居してもらうための心遣いとして、依頼するケースが多く見られます。
ハウスクリーニングは、家の広さや作業箇所によっても変動しますが、5~10万円程度が相場となります。
売却費用⑨ 引越し費用
現在住んでいるマイホームを売却する場合には、成約して物件を引き渡すまでの間に、新居に引っ越す必要があります。
引っ越し費用は、荷物の量や引っ越し先への距離によって大きく変わりますが、5万円〜30万円程度が目安です。引っ越し先に持っていかない不要品があれば、それらの処分費用も発生します。
マイホームを売却して得た売買代金を新居の購入費として充てたい場合は、「売却するマイホーム→仮住まい→新たに購入した新居」と、2回分の引っ越し費用が発生します。
賃貸に仮住まいする場合は、賃貸費用も発生するので注意しましょう。
売却費用⑩ 必要書類の発行費用
不動産を売却するには、必要な書類がいくつかあります。
例えば、印鑑証明書、住民票、固定資産税評価証明書などの提示を求められる可能性があるため、お手元にない場合はお近くの市役所で再発行をしなければいけません。
再発行の相場は書類の種類によって変わりますが、だいたいの相場は各300円程です。
まとめ
ご紹介した様々な売却費用の一覧です。
仲介手数料〈必須〉 | 売却価格の3%+6万円+消費税(価格が 400万円以上の場合) |
印紙税〈必須〉 | 数百円~数十万円 |
登記費用〈住宅ローンが残っている、登記内容に変更がある場合〉 | 1万円~5万円程度 |
住宅ローン繰上げ返済手数料〈住宅ローンが残っている場合〉 | 5千円~3万円程度 |
譲渡所得税〈譲渡所得が出た場合、特例を利用しなかった場合〉 | 20.315%(所有期間5年超の場合) |
土地測量費〈土地の測量が必要な場合〉 | 30~45万円程度(30~40坪の場合) |
建物解体費〈建物の解体が必要な場合〉 | 木造で1坪当たり4~5万円程度 軽量鉄骨造で1坪当たり6~7万円程度 |
ハウスクリーニング費〈ハウスクリーニングが必要な場合〉 | 5~10万円程度 |
引越し費用〈居住中の物件を売却する場合〉 | 5~30万円程度 |
必要書類の発行費用〈必要書類の発行が必要な場合〉 | 各300円程度 |
不動産売却費用は、余裕をもって早めに資金準備をスタートすること、不安な点は不動産会社に相談することが大切です。
今回解説した売却費用を把握しておけば、売却もスムーズに進められます。
損しない不動産売却を実現していただければ幸いです。